奨学金制度とは?①どんな種類があるのか教えます!
在学中に(貸与型の)奨学金制度を利用した場合、奨学金を返済する義務が発生します。奨学金を借りる場合、奨学金の返済はいつから始まっていつまで続くのか、事前に正確に把握しておくことが重要です。今回は、奨学金の返済を主なテーマとして、具体的な返済額や返済期間、さらには返済がきつい場合の免除・猶予方法等を解説します。
在学中に奨学金制度を利用した場合、「貸与が終了した月の翌月から数えて7カ月目」から口座振替による返済が始まります。
大学や専門学校を卒業する3月が貸与終了の月となることが多いため、卒業後に企業等に就職した場合、数ヶ月間働いた後に奨学金の返済が始まることになります。大学や専門学校を中退した場合でも、返済開始のタイミングは変わらないので、最後に奨学金が振り込まれた月をベースにして返済開始時期を計算することになります。ちなみに、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度を利用した場合、毎月27日が引き落とし日となります。
参考:振替日カレンダー
例えば、2020年3月に大学や専門学校を卒業した場合、最初の引き落とし日は2020年10月27日になります。
奨学金の返済額は、借りていた奨学金の金額次第で変わります。奨学金制度を利用する場合は、事前に返済に関する綿密なシュミレーションを行うことで、返済額や返済期間を具体的にイメージしていくことが必要です。返済方法には、「所得連動変換方式」と「定額変換方式」の2パターンがあります。それぞれについて以下で説明します。
所得連動返還方式は、奨学生の前年の収入に応じてその年の返還月額が決まる方式です。低収入の方の負担を減らす目的で、2017年4月から導入されました。(ただし、対象は第一種奨学金採用者)
参考:所得連動返還方式について
所得連動返還方式では、毎年の所得によって毎月の返還金額が変わるため、返還期間(回数)は定まっておらず、所得や貸与総額によって返還期間が異なる点に注意する必要があります。また、所得連動返還方式を選択した場合は、個人番号(マイナンバー)の提出が必須となります。
定額返還方式は、貸与総額に応じて月々の返還額が算出され、返還完了まで定額で返還する方式です。返還期間は、貸与総額や割賦方法に応じて決まります。すべての返済を終えるまでの間、毎月、一定額を返済し続けることが特徴です。ちなみに、返済期間のシミュレーションを行う場合、以下のページが役立ちます。
第一種奨学金/第二種奨学金は、返還期日の到来していない割賦金を繰り上げて一括返還することができます。繰上返還の申込方法については、下記のページを参照すると良いでしょう。
参考:繰上返還の申込方法
ここでは、奨学金を滞納した場合に発生する出来事を整理していきます。
奨学金の返済が滞った場合、滞納金が発生します。奨学金の利息によって利息の大きさは変わりますが、滞納した場合、それだけ支払うべき金額は大きくなります。
参考:延滞した場合
奨学金には、「人的保証」と「機関保証」の制度があります。このうち、「人的保証」の場合、原則として、保護者や親族に連帯保証人になってもらうことになります。連帯保証人とは、お金の借主に連帯して債務を負担すると約束した人のことで、借主とまったく同じ責任を負います。「人的保証」を選択している場合、奨学金の返済を滞納し、返還に応じない場合は、連帯保証人に請求がなされることになります。
※ ちなみに、「機関保証」は、日本学生支援機構が指定する保証機関が連帯保証を行う制度のことです。
返還開始から6か月が経過して延滞期間が3か月以上となった場合、個人信用情報機関に個人情報や滞納履歴などの個人情報が登録されることになります。これはいわゆる「ブラックリスト」に登録されるということを意味します。一度でもブラックリストに登録されてしまうと、すべての返済を完了したとしても、5年間継続して個人信用情報機関に個人情報が登録されることになるため、クレジットカードの発行やローンの組成が非常に困難になります。
再三の督促にも係わらず返還に応じない場合、返還期日が到来していない分を含めた返還未済額(発生済利息を含む)及び延滞金について、全額一括での返還が請求されることになります。
返済に応じない状態が長く続くと、給料や財産を差し押さえられるなどの法的措置が取られます。「機関保証」の場合は、保証機関が未納分を代わりに支払うことになりますが、その後、本人に対して一括請求がなされることになります。
上記の通り、奨学金の返済をを滞納した場合は、上記のリスクが発生することをあらかじめ理解しておきましょう。そして、万が一、滞納してしまった場合は、早めの対処を心掛けましょう。
奨学金の返済が厳しくなった場合、2種類の救済措置が用意されています。
1つ目の救済措置が「返還期限猶予」です。日本学生支援機構では、返済が厳しい人のために、一定期間、返済を延期してもらえる「返還期限猶予」の制度を設けています。具体的には、災害や病気、経済的困窮などの理由により奨学金の返済が厳しくなった場合に申し出ることができる制度です。日本学生支援機構の審査に通れば、最大で10年間の期限延長が可能です。ただし、元金や利息自体が減るわけではなく、一定の条件が定められている点には注意が必要です。ちなみに、猶予制度の条件については下記の通り。
病気により働くことが困難になった場合、2ヶ月以内に発行された「就労困難の記載がある診断書」が必要になります。病院を受診する際に、発行を依頼しましょう。
参考:傷病
2ヶ月以内に発行された「生活保護受給証明書」もしくは「民生委員の証明書」が必要になります。ただし、マイナンバーを提出すれば、上記の書類は不要となります、生活保護を受給中の人は、厚生労働省に問い合わせて発行を依頼しましょう。
参考:生活保護受給中
本人が失業していることを証明する書類等が必要となります。「雇用保険受給資格者証(求職活動記録面含む)」「雇用保険被保険者離職票」「雇用保険被保険者資格喪失確認通知書」などのコピーを用意しましょう。ハローワークに申請すれば、これらの書類は簡単に入手できます。仮に、入手が難しい場合は、退職した勤務先に「退職証明書」や「健康保険厚生年金保険資格取得(喪失)証明書」のコピーを申請しましょう。
参考:失業中
経済的に困窮している場合、猶予制度を利用することができます。具体的な要件としては、給与所得者の場合、年間収入が300万円以下、給与所得者以外の場合、年間所得が200万円以下となっています。書類については、「所得証明書」「源泉徴収票のコピー」「住民税非課税証明書」「直近連続3カ月分の給与明細のコピー」「直近連続3か月分の給与明細コピー」「確定申告書(第一表)の控のコピー」などが必要となります。どうしても返済が難しい場合は、これらの方法を検討するのも一つの方法です。最終的にきちんと返済する意思があるということを大前提ですが、必要に応じて、利用を検討してみると良いでしょう。
参考:経済困難
減額返還を利用すると、毎月の返済額を減額することにより、返済期限を延長することができます。具体的には、月々の返済額を1/2または1/3に減額し、それぞれ2倍、3倍の期間で返済することができます。ただし、元金や利息自体が減るわけではありません。また、減額返金制度を利用するにあたっては、いくつか条件が必要である点には注意が必要です。
参考:減額返還
全額もしくは一部が免除となるケースも
日本学生支援機構のHPには、未返済の奨学金の全額もしくは一部が免除となるケースが記載されています。具体的には、下記の通りです。
1 本人が死亡した場合
奨学金の返済義務がある本人が死亡した場合、本人の相続人または連帯保証人が「奨学金返還免除願」「本人死亡の事実を記載した戸籍抄本」「個人事項証明書又は住民票等の公的証明書」を提出すれば、免除の対象となります。
2 精神や身体の障害が著しい場合
本人と連帯保証人が「貸与奨学金返還免除願」「返還することができなくなった事情を証明する書類」「医師又は歯科医師の診断書」を提出すれば、免除の対象となります。
奨学金を借りる場合は、事前に返済のシミュレーションを行うことが重要です。また、返済に困った際に、負担を減らす方法を事前に知っておくことも大切です。仮に、自分一人で解決できない場合は、専門家に相談することも考慮した上で、自分にとって最適な方法を見つけて行くと良いでしょう。
[寄稿者プロフィール]
勝木健太(かつき・けんた):1986年生まれ。幼少期7年間をシンガポールで過ごす。京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、新卒で三菱UFJ銀行に入行。4年間の勤務後、PwCコンサルティング/有限責任監査法人トーマツを経て、フリーランスの経営コンサルタントとして独立。約1年間にわたり、大手消費財メーカー向けの新規事業/デジタルマーケティング関連プロジェクトに参画した後、大手企業のデジタル変革に向けた事業戦略の策定・実行支援に取り組むべく、株式会社And Technologiesを創業。人生100年時代のキャリア形成を考えるメディア「FIND CAREERS」を起点として、「転職Z」「英会話教室Z」「プログラミング教室Z」等の複数の情報サイトを運営。執筆協力実績として、『未来市場 2019-2028(日経BP社)』『ブロックチェーン・レボリューション(ダイヤモンド社)』等がある。